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第十一章・8
その日の夜は、ただ二人寄り添って寝た。
久々に愛し合うつもりだった二人だが、昼間のことをまだ引きずっているお互いに、気を遣いあっていた。
それでも、背中を向けていたヴァフィラが、寝返りを打ってルドーニの腕の中に潜り込んできた時には、ただそっと抱きしめた。
時折不規則に震える肩に、ヴァフィラが泣いているのだということに気づく。
『私はバラの花など嫌いだ』
ヴァフィラをかばって死んだ、ニコルス。
そのニコルスを思い出させるバラの花は、ヴァフィラを苦しめるのだろう。
師を失った瞬間をフラッシュバックさせるバラの花は、ヴァフィラの心を切り裂くのだろう。
(ニコルスが知ったら、悲しむと思うよ)
心優しかった大魔闘士・ニコルス。
ヴァフィラが自分のせいで自らを追い詰め、バラの花を憎んでいると知れば、さぞや胸を痛めるだろう。
だが、それは言葉にしなかった。
今、そう言ったところで、ヴァフィラを苦しめるだけだと解かっていたので、言葉にしなかった。
ただ、密かに泣くヴァフィラを抱きしめ、その背を撫で続けた。
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