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第十一章・9

 しかし、どうしていつもオレンジ色のバラだったのか。  翌日、神殿を出て長い石段を降りながら、ルドーニはまだバラのことを考えていた。  バラ園には、オレンジのほかにも赤や白、黄色など美しいバラはいくらでも咲いているというのに。 「オレンジ色が、好きだったんかな」  それにしても、徹底しすぎている感がある。  まるで、わざとオレンジ色のバラを選んで飾っていたかのようだ。  オレンジ色のバラに、何か特別な意味があるのだろうか。    途中の神殿まで降りたところで、ふと同じ魔闘士のディフェルの事を思い出した。  読書家で物知りな彼ならば、オレンジ色のバラに秘められた謎を解けるかもしれない。  その足で、彼の私宅へと進んでいった。  いつ見ても本を開いているディフェルは、突然のルドーニの訪問にもやはり読書をしていた。 「オレンジ色のバラの謎、か」  ルドーニの言葉に知的好奇心を刺激されたディフェルは、読みかけの本にしおりを挟んで閉じた。 「もしかすると、その花の持つ意味が関係しているかもしれない」 「花の持つ意味?」  そうだ、とディフェルはルドーニに向き合った。

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