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第十一章・10

「古くから、花には特別な意味が添えられる事が多々あった。例えば……そう、アネモネやヒヤシンスがそうだ。これらの花々には、神話と結びつけた花言葉がある」  花言葉、とルドーニは繰り返していた。  花に言葉が添えられるのか。 「花言葉に思いを込めて、口では言いにくい事を相手に伝える場合もある。花に託して、自分の考えを解かってもらうんだ」 「なるほどねぇ。巧いこと考えたもんだ」 「花言葉は、マンツォ帝国で付けられ始めるようになったと言われている。大陸には、カーラーンのマンツォ駐在大使であったメア・モンレイによって伝えられた。もう一人、大陸から東方、南方などを旅行してまわり、マンツォ帝国には4年間滞在したブリード・ラモトが、コルトレイの宮廷に招かれた際に紹介し……」 「あ、難しいことはいいから。その、オレンジ色のバラの花言葉、ってぇやつは?」 「それは知らない」  がっくり、とうなだれたルドーニにディフェルは笑うと、花言葉を綴った本がある、と教えてくれた。 「それを読んで勉強したまえ。自分で学習する事も大切だ」 「へいへい」  これは宿題ができちまったな、と軽口をたたきディフェルに礼を言うと、ルドーニは彼の神殿を後にした。

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