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第十一章・11

 花言葉を綴った本は、あった。  だが残念な事にカーラーン語で書かれている。  ディフェルに泣きついて翻訳してもらおうと思ったが、笑いながら、勉強勉強、と突っぱねられてしまった。  仕方なく、辞書を片手に必死で翻訳してみた。  しかし、何と言う事だろう。  この本には、オレンジ色のバラの花言葉が紹介されていなかった。  謎が謎を呼ぶ、オレンジ色のバラの花。 「もしかして、お師匠は知ってるかも」  ニコルスからオレンジ色のバラをもらうたびに、やたら嬉しそうだったイジェス。  その花言葉を知っていたからこそ、あれほど喜んでいたのかもしれない。  そう考えたルドーニは、法皇・イジェスの元へ向かった。 「オレンジ色のバラの花言葉?」  ルドーニの問いに目を円くした後、イジェスは穏やかに微笑んだ。 「知っている。もちろん」 「ホントか!?」  教えてくれよ、と意気込むルドーニに反して、イジェスはやけにゆっくりとした動作で机から離れた。  書架に進み、迷うことなく一冊の本を選び出す。

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