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第十一章・14

 ルドーニがヴァフィラを尋ねた時、彼はちょうど出かけるところだった。 「すまないが、何のもてなしもできない」  そう声をかけるヴァフィラは作業着に身を包み、造園用の道具をいくつも抱えている。  これから、バラ園の手入れに行くのだろう。 「あぁ、構わないで。いや、今度は俺がお茶の用意をして待ってるからさ。頃合いを見て休憩に来てくれ」 「ありがとう」  その時、不思議に思わないでもなかったのだ。ルドーニの姿を。  どこかでみたような格好。  布で丁寧にくるまれた何かを、大切に抱えている格好を。 「いってらっしゃ~い♪」 「?」  まるで、早く行きなさい、とでもいうように見送られてしまった。  ルドーニの事だ。  また何か、面白い趣向で私を驚かせようと企んでいるに違いない。  その程度の考えで、ヴァフィラはバラ園へ向かった。 「危ねえ、危ねえ」  ルドーニは大きく息をつくと、ヴァフィラの姿が完全に消えたことを確認してから家屋へ入った。  浴室の桶に水を汲み、布包みの中を取り出した。  オレンジ色のバラ。  近隣の町には見当たらなかったので、大きな街にまで足を運んでようやく手に入れた美しいバラの花だ。  桶に付け、水揚げをさせる。 「しおれねえでくれよ」

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