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第十一章・16
これは賭けだ、と感じていた。
ヴァフィラの、心の一番柔らかい部分。
そこへ侵入しようというのだ。
下手をすれば怒りを買う。
いや、それどころか別れの引き金にさえなりかねない。
ヴァフィラを待つ間、心臓が速く高く鳴っていた。
こんなに緊張するのは久しぶりだ。
そっと、胸ポケットに入れた本に触れる。
ニコルスの遺品である、花言葉の綴られた本。
どうか、ご加護を。
何も知らないヴァフィラが帰ってきた。
表戸のドアノブが、静かに動いた。
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