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第十一章・20
涙で滲むルドーニの顔。
あの時は、私と同じように幼かった少年。
心を開こうとしない私に、浜で拾った貝をくれたり、歌を教えてくれたりと、何かと気を引こうとがんばっていたっけ。
そして、そんなルドーニを、ニコルス先生はこのお茶の席に迎え入れていたのだ。
信頼と絆の花言葉を持つ、このオレンジ色のバラの見守る中で。
何をいまさら。
あの頃から、ルドーニは家族の一員だったのだ。
声を出そうとしても、息が詰まる。
喉が塞がれて、声が出ない。
ヴァフィラは、話す代わりにうなずいた。
小さく、ゆっくり。
そして今度は、大きく何度もうなずいてルドーニを見た。
こぼれる涙。
泣かせちゃったな、ごめん。
ふたり、抱き合って泣いた。
オレンジ色のバラの、ニコルスの見守る中、二人抱き合ってただ涙をこぼした。
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