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第十二章・14
「イジェス様は、おられるか?」
「お師匠? 用があって外出してるけど」
いつもと違い、何やら落ち着かない様子のヴァフィラ。
心なしか、顔色も悪いようだ。
「どうかした?」
「お前には、関係のないことだ」
まあ待てよ、とルドーニは立ち去ろうとするヴァフィラの腕をつかんだ。
「何かあったんだろ? その壺、何だよ。分けてほしいものがあるなら、俺にだって解かるかもしんない」
ヴァフィラは、手に小ぶりの壺を抱えているのだ。
少し迷うようなそぶりを見せていたが、やがて口を開いた。
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