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第十二章・15

「その、蜂蜜があったら分けてもらいたいと思って」 「蜂蜜?」 「ニコルス先生が倒れられて。大丈夫とはおっしゃってるんだが、喉が腫れあがって声もろくに出せないでおられるんだ」  毒を使役する魔闘士が、その自らの毒のために時折体調を崩すことは、イジェスから聞いて知っている。  いつもならヴァフィラに心配かけまいと、無理をしてでも動いているニコルスが伏せるとなると、それは相当悪いのだろう。 「蜂蜜か。確かに喉にはいいよな。ちょっと待ってろ」  ルドーニは家屋に入り、棚をあさった。  蜂蜜ならたしか、この棚に入っていたはず……だが……。 「だめだ。空っぽだった」  蜂蜜を入れる壺なら見つかったが、中身がない。  養蜂の蜂蜜を採るのは、年に一回。  来月がその採取の季節なので、今が一番ものがない時期なのだ。  うなだれるヴァフィラ。  何とかしてやりたい。  何とか力になってやりたい。  そんなルドーニに、名案が浮かんだ。

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