293 / 459
第十二章・15
「その、蜂蜜があったら分けてもらいたいと思って」
「蜂蜜?」
「ニコルス先生が倒れられて。大丈夫とはおっしゃってるんだが、喉が腫れあがって声もろくに出せないでおられるんだ」
毒を使役する魔闘士が、その自らの毒のために時折体調を崩すことは、イジェスから聞いて知っている。
いつもならヴァフィラに心配かけまいと、無理をしてでも動いているニコルスが伏せるとなると、それは相当悪いのだろう。
「蜂蜜か。確かに喉にはいいよな。ちょっと待ってろ」
ルドーニは家屋に入り、棚をあさった。
蜂蜜ならたしか、この棚に入っていたはず……だが……。
「だめだ。空っぽだった」
蜂蜜を入れる壺なら見つかったが、中身がない。
養蜂の蜂蜜を採るのは、年に一回。
来月がその採取の季節なので、今が一番ものがない時期なのだ。
うなだれるヴァフィラ。
何とかしてやりたい。
何とか力になってやりたい。
そんなルドーニに、名案が浮かんだ。
ともだちにシェアしよう!