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第十二章・17

 もうもうと立ち込める煙の中、ルドーニは木によじ登っていった。  煙にまかれるのは蜂だけではなくルドーニも同じで、息苦しくて眼が痛くてそれはそれは大変だったが、ヴァフィラの為だ。  そこはぐっとこらえて、壺を片手に木に登った。 「へへ、すまねえな。ちょっぴり分けてもらうぜ」  大きな木のうろの蜂の巣。  うろに腕を突っ込み、手さぐりで巣に触れる。  ぐいと力を入れて、蜜と蜂の子がたっぷりつまった巣を引くと、そのかけらが外れた。  そっと腕を引き、採った巣ごと壺に入れると。 「ッてぇ!」  煙に負けずがんばっている蜂がいたらしく、ルドーニの腕を思いきり刺してきた。  一匹ががんばると他の蜂もやる気がでたのか、何匹も何匹も群がってくる。 「くっそ。まだ欲しいんですけど!?」  もう一度、うろの中に腕を突っ込むルドーニ。  情け容赦なく、腕に顔にと蜂が群がってくる。  ミツバチとはいえ、これだけ多くの数に刺されると事だ。  腕も顔も、腫れあがってしまうに違いない。  ぞっとした時、師匠・イジェスの教えを思い出した。

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