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第十二章・19
「あ~、やれやれ。ひどい目に遭うとこだったぜ」
足場をたどりながら、ゆっくりとルドーニが降りてきた。
手に持った壺からは、蜂の巣の破片がのぞいている。
「採れたぜ、蜂蜜!」
「ルドーニ、大丈夫だったか!?」
初めて聞く、感情をあらわにしたヴァフィラの声に、ルドーニは驚いた。
そして、嬉しくなった。
心配してくれたんだな、ヴァフィラ。
「平気平気。少し刺されたけど、痛くもかゆくもないぜ!」
実はウソだ。
最初に刺された数か所は、熱をもって腫れあがっている。
しかし、ヴァフィラにいらぬ心配はかけられない。
「この蜂蜜、早くニコルスに舐めさせてやれよ。あと、蜂の子も栄養があるから、できれば炒ってそれも食わせるといい」
「うん、解かった」
壺を手渡されると、ヴァフィラは駆けていった。
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