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第十三章・13
最悪、家から叩き出されるかもしれない。
それでも、彼を心配する気持ちの方が大きいルドーニだ。
ヴァフィラの怒りを買う覚悟で、彼が臥せっているであろう私宅のドアを叩いた。
予想通り、反応が無い。
寝室か、長椅子で横になっているに違いない、とルドーニは鍵のかかっていない家屋の表戸を開けた。
しゃらんしゃらんと、ドアベルが鳴る。
初めて見るもの初めて聞く音なので、今回ヴァフィラが付けたのだろう。
俺のような、療養中に尋ねてくる無作法者の侵入に気づくために。
だが一つ奥のリビングへと進み、長椅子に横になっているヴァフィラを見つけても、ルドーニは幸い攻撃を受けずに済んだ。
いや、それは喜ぶべきことではなく、そんな気力も無いのか……?
「心配そうな顔をしないでくれ」
穏やかな、ヴァフィラの声だった。
「平気? ベッドに連れて行こうか?」
それには及ばない、と薄く微笑むのだ、この恋人は。
精一杯、無理をして。
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