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第十三章・14

 そんな思いも手伝って、キッチンへ急ごうとしたのだ。  お茶だけではなく、何か滋養のある軽食をこしらえようと。  そこへ、ぱたりと床に落ちた物が。 「ルドーニ、何か落ち……ああっ!?」  突然のヴァフィラの大声に、ルドーニは飛び上がった。  そして、震え上がった。  そういえば、うなぎパイを持って来てたんだったーッ!  大声を上げたという事は、ヴァフィラはあの菓子を知っているという事だ。  そして、“精力増強”と勘違いして……、そんなブツを持ちこんだ俺に腹を立てて……。    恐る恐るヴァフィラの顔色を窺ったルドーニだったが、その表情を見て自分の青い顔に血の気が戻った。 「これ! うなぎパイ! 一度でいいから、食べてみたかったんだ!」 「え、あ、そッ、そうなの?」  うなぎパイは謳い文句が、色事を連想させる『夜のお菓子』である。  だのに、なぜヴァフィラはそんなに喜ぶんだ!?  ルドーニが問うまでもなく、ヴァフィラは自分から『うなぎパイ』にまつわる思い出を語り始めた。

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