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第十三章・17

「やはりルドーニの焼いたパンケーキは、美味しいな」  そんな嬉しい事を言ってくれる、ヴァフィラ。  ずっと食べたかったという『うなぎパイ』より先に、手作りの軽食に口を付けてくれる彼の思いやりが温かい。 「な、うなぎパイも食べてみれば? 念願だったんだろう?」 「ああ、そうだな」  にこにこと、ヴァフィラはパイを手に取った。  さくり、と心地よい歯ごたえ。  口いっぱいに広がる、コクのある甘い味。  おいしい、とご機嫌のヴァフィラだが、素朴な疑問を感じた。 「ルドーニ、これのどこが『夜のお菓子』なんだろう。どうしてニコルス先生は『大人のお菓子』とおっしゃったんだろう」 「え? あ、あぁ……」  やはりそう来たか、とルドーニは忙しく頭を働かせた。  純粋なヴァフィラを傷つけることなく、怒らせることなく、巧く説明せねばならないのだ。  それはつまり、とルドーニは冷や汗をかきながら蘊蓄を傾け始めた。

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