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第十四章・10
あの野郎、などとナッカを罵りながらも、腕を引く力は緩めないルドーニだ。
聞き分けの無い男に、ヴァフィラは実力行使に出た。
「痛い! ヴァフィちゃん、いきなり殴るなんてひどい! しかもグーで!」
「今から出かけるところだったんだ! 邪魔をするな!」
床にしゃがみ込んだルドーニを置いて、ヴァフィラは外へ出ると勢いよくドアを閉めた。
今から出かけるところだった。
それは嘘じゃない。
しかも、ルドーニ先生の授業参観に行くつもりだったのだ。
「疲れるだろうから、昼食を持って行ってあげようと思っていたのに」
授業を、生徒を放り出して突然飛び込んで。
しかも明るいうちから情事に耽る、などもっての外だ。
しかし、残された生徒は気になるところ。
放ったらかしにされて、所在無げにしているのではないだろうか。
今からでもルドーニの代わりに先生役を務めようかと、ヴァフィラの足は自然と講義室の方へと向いていた。
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