352 / 459

第十四章・14

「一体なんだって急にそんな事を? 話してくれ。俺のどこが不服?」  妙な事に、ルドーニが一歩進むと、その分一歩ヴァフィラが後退する。  まるで彼を、近づけまいとでもしているようだ。 「私の傍に寄るな」 「なぜ?」 「私が愚かだったんだ。少しばかり優しくされて、調子に乗って。毒の血を持つ魔闘士は、好いた人間など作るものではなかったんだ」  どうしていきなりそんな事を。  考えるより先にルドーニはヴァフィラの元へ駆けより、しっかりと抱きしめていた。  やめろ放せとヴァフィラは散々もがくが、体格の上回るルドーニにすっぽり抱かれてしまうと手も足も出ない。  その上この男はルドーニの耳元で囁き、甘く低い声を送り込んでくる。  骨を通した振動で、痺れさせてくる。 「せめて理由を。このままじゃあ、俺は死んでも死にきれねぇ」 「死ぬ、と言うな!」  今までで一番怒気をはらんだ声に、ルドーニは眉根を寄せた。 「ヴァフィラ、やっぱり自分の毒で俺が死ぬんだ、って考えてる」 「さっきから言ってるだろう」  でもどうして、とルドーニは重ねた。  今まで巧くいってたんだ、俺たちは。  今さらヴァフィラの毒で死ぬなんてこと……。

ともだちにシェアしよう!