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第十五章・2
「ひととおりの診断は済んだ。あとは記憶を取り戻すだけ」
「お師匠にも無理なのか?」
「努力はしたが、芳しい手ごたえがなくてな」
お前にならできそうな気がするのだよ、とイジェスはルドーニに眼をやった。
「しばらくヴァフィラの傍で、面倒を見てやってくれないか」
「お師匠でも不可能だったことが、俺にできるかどうか」
「親しい者が傍に居ると、記憶の糸がほどけるきっかけが生まれるかもしれん」
「解かった」
正直、イジェスの命令はルドーニにはありがたかった。
これで法皇の名の元に、堂々とヴァフィラの傍に居ることができるのだ。
「待ってろよ、ヴァフィラ。絶対治してやっからな」
そんな経緯を経て、ルドーニはヴァフィラの私宅へと走った。
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