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第十五章・3

「ルドーニさん」  ヴァフィラの居る部屋へ入るなりのその一言に、ルドーニの心は一気に曇った。 「また『さん』なんて他人行儀な。ルドーニ、でいいっていったろ?」 「はい、ルドーニ」 「やりにくいなぁ、ったく」  ルドーニに対して、やたら素直でお上品になってしまったヴァフィラ。  それでも、他の連中に比べればましな方だと思う。 「今日は誰かと面会した?」 「……いいえ。せっかく来てくださったのに、会いませんでした」  この通り、魔闘士の仲間たちが見舞いに来ても、なかなか顔を合わせようとしない。  なぜだと問うと、苦しくなる、という。

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