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第十五章・6
それでもめげないルドーニだった。
有無を言わさず唇を合わせ、軽くついばんだ。
やがて深くつながり、ヴァフィラの咥内へ忍び込む。
「や、やめっ!」
ようやく、ヴァフィラがルドーニの腕の中で身じろいだ。
特別な何事かをしている、という気持ちが沸き起こったのだろう。
もがいて逃げて、離れてしまった。
「今のが、キス。素敵だろ?」
「素敵、とかどうとかは解からない」
頬を染め、軽く息を弾ませるヴァフィラに変化が訪れた事にルドーニは気づいた。
「今、何て言った?」
「素敵かどうかは解からない、と」
丁寧語が消えている!
無意識のうちに、記憶の奥底のヴァフィラが目覚めたんだな、とルドーニは解釈した。
「治るって、ヴァフィラ! 絶対治る。俺が治して見せる!」
「……だといいけど」
はりきるルドーニを、ヴァフィラは不安げな表情で見つめていた。
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