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第十五章・9

 もがき、暴れるアルバフィカは、キスの合間に大声で叫んでいた。 「助けっ、先生! ニコルス先生ーッ!」  は、と緩んだルドーニの腕から逃げたヴァフィラは、隣の部屋へ駆け出していった。 「無理強いは……、まずかったか……」  ルドーニは暗い気持ちでベッドから降りると、ゆっくり隣室へと進んだ。  ヴァフィラは、ソファに丸くなっていた。 「ヴァフィラ」 「先生は、もういない。そうだな、ルドーニ」 「ああ」  膝を抱え、ますます丸くなってしまったヴァフィラに、かける言葉が見つからない。 「一番辛いことを思い出させちまったな。ごめん。悪かった」 「いいんだ。避けられない事なんだから」  後は、ヴァフィラがソファで寝入ってしまうまで、そっと隣に座っていた。  彼が深い眠りについたところで、その軽い体を抱き上げベッドへ運んだ。  イタズラをする気分など、すっかり失せていた。

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