378 / 459

第十五章・10

「とにかくだ」  ルドーニは鏡に向かって自問自答していた。 「エッチぃコトが記憶を取り戻す引き金になるのは、確かだ」  う~む、と顎に手を当てる。 「しかしヴァフィラが、俺を警戒し始めてしまった」  それはそうだろう。  恋人だ、という前提なしにいきなりキスを無理矢理かませば痴漢だ。  よしんば『俺はあなたの恋人です』と宣誓しても、記憶がなければ実感もわかない。 「ヴァフィちゃん自ら、俺を求めるようにさせるには……」  そしてルドーニは、ぽんと手をひとつ叩くと、闇市へと足を向けた。

ともだちにシェアしよう!