380 / 459

第十五章・12

「食後の一服はいかが?」 「煙草か」  以前の私は吸っていたのかな、とヴァフィラが問うと、ルドーニは堂々と真っ赤な嘘を並べたてた。 「ヴァフィちゃんは、俺以上のヘビースモーカーだよ。特に食後の煙草はデザートみたいなもんだ」 「そうか」  疑う事も無く、ヴァフィラはルドーニの差し出したシガーをくわえた。 「はい、火」 「ありがとう」  こほこほと煙にむせるヴァフィラに、ルドーニは澄まして言う。 「ああ、煙草の吸い方も忘れてるみたいだな。大丈夫、ゆっくり吸って吐けばいい」 「ゆっくり吸って、吐く」  濃厚な味と香りが、肺の中へ降りてゆく。  煙を吐くと、脳の血管が収縮した心地を感じた。

ともだちにシェアしよう!