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第十五章・12
「食後の一服はいかが?」
「煙草か」
以前の私は吸っていたのかな、とヴァフィラが問うと、ルドーニは堂々と真っ赤な嘘を並べたてた。
「ヴァフィちゃんは、俺以上のヘビースモーカーだよ。特に食後の煙草はデザートみたいなもんだ」
「そうか」
疑う事も無く、ヴァフィラはルドーニの差し出したシガーをくわえた。
「はい、火」
「ありがとう」
こほこほと煙にむせるヴァフィラに、ルドーニは澄まして言う。
「ああ、煙草の吸い方も忘れてるみたいだな。大丈夫、ゆっくり吸って吐けばいい」
「ゆっくり吸って、吐く」
濃厚な味と香りが、肺の中へ降りてゆく。
煙を吐くと、脳の血管が収縮した心地を感じた。
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