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第十五章・14
「黙っておくのはフェアじゃないから言うけど、この煙草には細工がしてあります」
「何を……」
「闇市で買ったブツなんだけど、東洋の強烈な媚薬が混ぜてある」
「媚薬」
「だからさ、エッチな気分になって来ない? キスしたいとか、さらにイイ事したいとか」
「バカな! そんな媚薬に敗ける私では……」
後の言葉を、ヴァフィラは飲み込んだ。
すいと伸ばされたルドーニの手が、彼の髪をかき上げたのだ。
分厚い男の手のひらが頬に当たり、熱を伝えてくる。
それだけでもう震えが来た。
「ヴァフィラ」
「よせ!」
ぱん、とヴァフィラはルドーニの手を払った。
だが、この男はそれすら目尻を下げて喜ぶのだ。
「いいねぇ、それでこそヴァフィちゃん。だが、いつまで持つかな」
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