389 / 459

第十五章・21

「よ、ヴァフィラ。どう? 具合は」  テーブルについて豆を剥いていたヴァフィラは、キッチンに入って来たルドーニに微笑んだ。 「頭痛も治ったし、気分は上々だ」 「よかった」  ヴァフィラの向かいの席に掛けたルドーニは、豆を手に取り共に剥き始めた。 「ルドーニ」 「ぅん?」 「ありがとう」  どうして? と言った顔つきのルドーニに、ヴァフィラは眼を輝かせた。 「言ったように記憶が無い間の事はすっかり忘れてしまったが、お前のことだ。私の為にいろいろと心を砕いてくれたのだろう? 礼を言う」 「お礼なんて」  そんなの俺とヴァフィちゃんの仲だったら当然だろう? と苦笑いを向けるルドーニだ。 (煙草に仕込んだ媚薬嗅がせて、無理矢理寝るように仕向けました、なんて絶対に言えないな。これは)  何も知らないヴァフィラは、幸せそうに微笑んでいる。 「俺はその笑顔が見られれば、それでいいんだよ」  巧い事言ってごまかしたルドーニ。  真相は闇から闇へ葬るはずだった。

ともだちにシェアしよう!