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第十五章・21
「よ、ヴァフィラ。どう? 具合は」
テーブルについて豆を剥いていたヴァフィラは、キッチンに入って来たルドーニに微笑んだ。
「頭痛も治ったし、気分は上々だ」
「よかった」
ヴァフィラの向かいの席に掛けたルドーニは、豆を手に取り共に剥き始めた。
「ルドーニ」
「ぅん?」
「ありがとう」
どうして? と言った顔つきのルドーニに、ヴァフィラは眼を輝かせた。
「言ったように記憶が無い間の事はすっかり忘れてしまったが、お前のことだ。私の為にいろいろと心を砕いてくれたのだろう? 礼を言う」
「お礼なんて」
そんなの俺とヴァフィちゃんの仲だったら当然だろう? と苦笑いを向けるルドーニだ。
(煙草に仕込んだ媚薬嗅がせて、無理矢理寝るように仕向けました、なんて絶対に言えないな。これは)
何も知らないヴァフィラは、幸せそうに微笑んでいる。
「俺はその笑顔が見られれば、それでいいんだよ」
巧い事言ってごまかしたルドーニ。
真相は闇から闇へ葬るはずだった。
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