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第十六章 時の彼方の恋人

 荒い呼吸を鎮めながら、ヴァフィラはルドーニの腕の中にいた。  熱い。  熱い。  熱いひと時を終え、けだるさが体中に降りてくる。  汗ばむ額に指がかかり、乱れた髪を梳いてくる。  その心地よさに大きく深く息をつき、ヴァフィラは身じろいだ。  そんな彼の心中を察したように、ルドーニが声をかけてきた。 「暑いな。平気?」  窓は半分ほど開かれているが、風が入ってくる気配がない。  蒸し暑い、暗い夜。  久々のルドーニとの逢瀬はヴァフィラの体を、心を熱く火照らせ、普段なら思いもつかない考えを運んできた。

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