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第十六章・7
髪を撫でてくる掌の感触に、目覚めた。
は、と我に返る。
一瞬、気を失ってしまったらしい。
どのくらいだろう、意識がなかったのは。
ただ、ルドーニの姿はすでに体内にはなく、乱れた寝着も整えられている。
ふと、紫煙のくゆりを感じた。
ルドーニは、私の前では煙草を吸うのはやめたはずなのに。
それに、バラ園に灰を落とされるのはごめんだ。
軽く彼の髪をひっぱり、いたずらを咎めるような声をかけた。
「こんなところで煙草を吸うのはやめてくれ」
ん、と首がひねられる気配。
そして笑いをふくんだ声が返ってきた。
「何? 今日に限って。外でヤッたから、興奮してる?」
なんて下劣な言い回しを!
甘い気分はたちまち霧散し、ヴァフィラは髪どころか頬をつねった。
「何だ、その返事は! とにかく煙草を消せ。今すぐにだ!」
へいへい、と人を食ったような声。
そして、伸びてくるたくましい腕。
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