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第十六章・29
元に戻るには俺と一回ヤるしかない、とは到底正直に話せない二人だったので、戻ってからは当たり障りのない言葉で場を濁した。
「えぇと、つまり、夜のバラ園で二人っきりだったって状況を再現すれば何とかなるんじゃあねえか、ってぇことで」
歯にものの挟まったようなアドリアノの言い方には不満を感じたヴァフィラだったが、それで元の時代に戻れるのなら充分だ。
ただひたすら、夜を待つことにした。
(そういやぁルドーニのやつ、ヴァフィラは他の男は知らねえ、っつってたな)
いやしかし、他の男を知らないのは自分も同じだ。
女とならさんざん遊んでいるが、男はアプロスしか抱いたことはない。
巧くいくのか、と不安は多々あったが、アプロスを取り戻すためには仕方がない。
乱れる気持ちを振り払うように、やたらと凝った昼食や夕食を準備し、ヴァフィラにふるまった。
「闇の魔闘士は、どうしてみんな料理が上手いのだろうな」
アドリアノの腕前に感嘆しながらも、ルドーニのことを思い出さずにはいられない。
1日しか経っていないのに、ずいぶん長いこと離れているような気になる。
(早くルドーニに会いたい)
顔はそっくりでも、アドリアノはやはりルドーニとは全く違う。
当たり前のことだが、ルドーニはルドーニ。
他の人間では、代わりにならないのだ。
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