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第十六章・30
夜のバラ園へとアプロスを連れ出したルドーニの心臓は、ひどく激しく打っていた。
隣には、何も知らないアプロスが嬉しそうににこにこしている。
「確か、ここだったよな」
昨夜、ヴァフィラと共に星を眺めた場所。
ここで二人、愛を確かめ合ったのだ。
腰を下ろすと、アプロスもそのすぐ横にしゃがんできた。
「これで、元に戻れるんだよね?」
「ん? ああ」
昨晩同様月はなく、星だけが降るように輝いている。
そして、咲き誇るバラたち。
風に乗って泳ぐ、甘い甘い香り。
そっとアプロスの肩に腕を回すと、振り払いもせず身を任せてきた。
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