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第十六章・34
夜風を頬に受けながら、ヴァフィラはバラの香りを深く吸った。
美しいバラ園は、美しいまま未来に残されている。
会ったことはないが、この時代の毒の魔闘士に感謝した。
「星がきれいだねぇ。座ろうか?」
「ああ」
相変わらずつっけんどんな言い方だが、そこには弾んだ響きがあった。
これで元に時代に戻れると信じているのだ、ヴァフィラは。
そして、そうなるためには俺に抱かれる必要があるのだ、とはまだ打ち明けていない。
「ここで、お前たちも過ごしていたのだな」
「まぁね」
その時自分は、生まれ変わりというものがあるのなら、また二人出会いたい。
一緒に生きて、苦しみを、喜びを分かち合いたい、と考えていた。
ルドーニに瓜二つのアドリアノ。
そして、私とそっくりだというアプロス。
彼らが、私たちの来世の姿なのだろうか。
「ヴァフィラ。あの、な」
アドリアノが話しかけてきた。
少し強く風が吹き、バラの花びらを数枚散らした。
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