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第十六章・39
「元に戻ったんだ、ヴァフィラ。よかった……、よかった」
ルドーニが、キスをくれた。
優しい、柔らかい口づけ。
ヴァフィラもそれに応えようとした、が、ふと思いなおして顔を離した。
「ここでは駄目だ、ルドーニ」
「え、どうして?」
「また、入れ替わってしまうかもしれない!」
確かにね、とルドーニは頬をかいた。
そうなっては一大事。
揃って、バラ園を後にした。
寄り添い、ゆっくり家屋を目指した。
時折、怖々と夜空を見上げた。
降るような星々。
だがそれはもう一斉に流れることなく、ただ静かにヴァフィラに微笑みかけていた。
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