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第十六章・43
はぁはぁと荒い呼吸を整えながら、ヴァフィラはルドーニに向き合った。
「もう一度……」
「ん?」
「もう一度、言ってくれ」
何を、とは訊かれなかった。
ただ髪を撫で、頬を擦り寄せ耳元で、愛してる、と囁かれた。
あぁ、とヴァフィラは瞳を閉じた。
ふと不安になって、もう一度ルドーニの顔を覗き込む。
大丈夫、ルドーニはルドーニだった。
他の誰かと変わってなどいなかった。
瞳を閉じ、あのアドリアノと名乗る男を思い返した。
今頃彼も、愛しいアプロスと愛し合っているのだろうか。
その時はちゃんと、愛してる、と言ってあげてくれ、とヴァフィラは願わずにはいられなかった。
熱い時は過ぎ、涼しい風がふわりと優しくカーテンをなびかせた。
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