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第十七章・9
優しくしてくれ。
そんな風に、ヴァフィラは考えたはずだ。
ルドーニは、彼の耳を舌先でなぞりながらそう思った。
(甘えんぼさんだからね~)
でも誕生日だから、特別な何かを期待してもいるはず。
(結構むずかしいな)
そんな風に考えながら、ルドーニも楽しんでいるのだ。
結果、彼はサイドテーブルに掛けてあった薄絹の布を、するりと手にした。
大判のスカーフくらい大きな絹だ。
それをヴァフィラの顔から上半身にかけて、すっぽりと掛けてしまった。
「ルドーニ?」
「……」
返事の代わりに、そっと口づけた。布越しではあるが。
ヴァフィラも、それに応えた。
しかし彼は、大きな違和感を覚えていた。
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