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第十七章・10

 絹越しのキス。  滑らかな布地が、思いもかけない障害となってヴァフィラとルドーニの間に立ちはだかった。  途端に、ルドーニが大きく動き始めた。  唇も、舌も奪い去ってしまうような、荒々しい激しいキス。  しかしそれは、全て布を隔てての事なのだ。  かなりのもどかしさを、ヴァフィラは覚えていた。  キスを終え、ルドーニの唇がヴァフィラの耳をくすぐる。  息を吹きかけ、昂ぶらせてくる。  耳溝を舌先がなぞり、耳たぶを歯先がかじる。  薄く薄く柔らかな絹は、今度はそれらのルドーニの動きを助けてきた。  触れるか触れないかくらいの微妙な衣擦れは、くすぐったさと同時に性的な興奮をかき立ててくる。  速くなった呼吸に息苦しさを感じて、ヴァフィラは横向きに寝た。  しかし、それこそがルドーニの思うつぼだった。

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