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同居人は料理が美味いけど、俺は料理を食べるのが上手い(6)
翌日、盛山が布団から起き上がる頃、まだ細川はベッドの中に潜り込んでいた。
二人は日々交代で布団とベッドを行き来しているが、細川はベッドで寝る時、いつも体をくの字に折り畳んでいる。盛山には丁度良い大きさのベッドでも、細川では足が出てしまう。
盛山の家には元々ベッドが一つしかなかったのだが、細川と同居するにあたって布団を一組用意した。男二人がシングルベッドを使うということには、様々な問題が付きまとう。単純に狭いという以上に、二人が同居を開始したのが六月だったこともあるが、暑苦しさが尋常ではないのだ。
改めて細川の姿を見ると、盛山は名残惜しくなった。しかし、二日待てばいつものように顔を合わせることになる。
細川にひっそりと朝の挨拶をすると、盛山は気を取り直し、ティーバックの紅茶と総菜パンを朝ご飯にして、早々に支度をする。今日はバイトのシフトが八時間入っていた。盛山は薬局でレジ打ちや品出しのバイトをしているのだ。
「じゃあ、行ってきます」
返事を期待してはいなかったが、盛山はそっと口に出した。
すると、ベッドの上の塊がモゴモゴと動き出して、生じた隙間から茶髪が見えた。
「……いってらっしゃい」
いつもより数段低い細川の声に、盛山は自然と頬を緩ませていた。
帰宅したら細川のカレーが待っている。
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