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同居人の誕生日は今日だけど、俺は何も用意してない(3)

盛山が買い物かごの中身に違和感を抱いたのは、思い過ごしではなかった。レジを通される度に露わになっていく銀色は、明らかにアルミ缶なのだ。 基本的に、二人とも飲料は紙パックかペットボトルしか買わない。つまり、これは普通の飲料ではない……盛山はまだ飲めないもの。お酒だ。 けれど盛山は、細川が今までこれを飲んでいるところを見たことが無い。少なくとも、出会ったときはお互い未成年だったはずだ。 「年齢確認させていただいて宜しいですか?」 「免許証でいいですか」 「――はい、ご協力ありがとうございます」 店員のお姉さんと細川のやりとりは、盛山の想像を現実のものに変えていく。 つまり、細川は既に二十歳になっていて、盛山は細川の誕生日をスルーしてしまったということになる。けれど、盛山はそんなことを今の今まで知らなかった。細川が何も言わなかったからだ。 確かに細川は、自分から誕生日を祝って欲しいなどと言える性格ではない。しかも、既に成人しているということは、細川は一年浪人して大学に入ったということだろう。これも話題にならなければわざわざ言うことは無い。けれど、何かもやもやしたものが盛山の胸に残っている。細川のことを知っていきたいと思っていたのに、何一つ行動を起こしていない自分を情けなく感じる。 それだけでなく、同居をしているというのに、付き合っているというのに誕生日のことを何一つ話さなかった細川にも、僅かな苛立ちを感じていた。 会計を終えて買ったものをエコバッグに詰めていく細川に、盛山は意を決してさりげなく尋ねた。 「細川、もう二十歳になってたんだな。誕生日いつだったんだ?」 「実は今日なんだよ。さっき思い出して酒買ってみたんだ。すっかり忘れてたわ……」 「今日か……」 盛山は腕時計をちらりと見遣る。午後五時半。 ここから一番近い洋菓子屋は、二、三分もあれば辿り着ける場所にあり、午後七時まで開いている。盛山は胸を撫でおろした。細川の誕生日はまだ終わってなどいない。

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