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同居人の誕生日は今日だけど、俺は何も用意してない(10)
「恋人らしいことをしていくべきとか、そうしなきゃいけないって考えは違うだろ。お互いがやってみたいときに、やりたいことをすれば良いと思う」
「そっか、そうだよな。……俺、細川にこうやって頭撫でてもらうの好きなんだ。安心するよ」
「オレも、お前の頭撫でるの結構好きだ。頭撫でてる時のお前、なんていうか、可愛いというか。気に障ったら悪い」
細川はそう言い置くと、照れ隠しなのか、盛山の頭を更にぐしゃぐしゃと撫でる。可愛いと言われたことは確かに引っかかるが、不思議と悪い気はしなかった。細川の照れくさそうな表情と声色が、「可愛い」という言葉を「好き」という言葉の類語に感じさせたからだ。
「細川が言うなら許してやる。なあ、他にしてみたいことがあれば教えてくれよ。俺もやってみたいこと、都度伝えるから」
「……じゃあ、さっきから思ってたんだけど、名前で呼んでくれ」
細川の視線が盛山を射抜いた。細川は最初のキスをしてから、盛山を名前で呼んでいる。盛山だって細川を名前で呼んでやりたかったが、タイミングを見失っただけなのだ。そのチャンスが今与えられている。
「分かったよ、賢太郎」
「うん。……なんだこれ、かなり恥ずかしいな」
でも嬉しいよ、と照れくさそうに頬を緩めた賢太郎が、とてつもなく愛おしかった。
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