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同居人の誕生日は今日だけど、俺は何も用意してない(12)

ケーキを食べた後、二人はそれぞれお風呂に入った。大体は賢太郎が先に風呂に入り、後に健が入る。健の家の風呂は狭いので、二人一緒に入るなんてことは到底できない。 最近、健は浴室で賢太郎の存在を意識することが増えた。浴室の床の生温さや飛び散る水滴、シャンプーの匂いに、恋人がそこに居た気配を感じてしまう。 邪な考えを振り払うように、シャワーのハンドルに手をかけた。自身の好む温度より少し熱めのお湯が降り注ぐ。 健が風呂から上がると、賢太郎はテレビを見て寛いでいた。J-POPの特集番組だ。 テーブルには、夕方買っていた酒の缶が置かれている。健は肝が冷えた。賢太郎は冷蔵庫の中身を見たのだろう。後で渡そうと思っていた生チョコも見られた可能性がある。 「ほそ……賢太郎、お酒飲まないのか?」 「風呂入ってる間にオレが出来上がってたら、お前が嫌な思いするかなと思って」 「え、それチューハイだよな? 一本で出来上がっちゃうもんなの?」 「分かるわけないだろ。飲んだことないし」 アルコール度数三%って言われてもピンと来ねーよな、と賢太郎は微笑んでいる。健は賢太郎に話しかけたのは失策だったと気づいた。今から冷蔵庫に向かったら確実に怪しまれる。 いや、どうせ分かることなのだから多少怪しまれても関係ない。それに、賢太郎が酒を飲むというのに、自分だけ何もないというのも味気ない。健は冷蔵庫の中から、例の生チョコと炭酸飲料を取り出した。

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