24 / 75

同居人の誕生日は今日だけど、俺は何も用意してない(13)

「健、どうした?」 「俺も何か飲みたくなったの。あとこれ……おつまみってわけじゃなくてプレゼントだけど、良かったら食べなよ」 健は炭酸飲料を注いだ後、何でもないように生チョコ入りの箱を差し出した。賢太郎は徐に中身を確認すると、一粒つまんでから箱を閉じ、テーブルの隅へ置いた。 「これもわざわざ用意してくれたんだな。ありがとう。……毎日少しずつ味わうわ」 賢太郎は生チョコを口に入れると、見たこともない満面の笑みを浮かべた。彼のその顔が意外すぎて、健は吹き出すように笑ってしまう。賢太郎は健を睨みつつ、チューハイの缶を開けた。コップと缶を合わせて乾杯、とおどけて見せると、賢太郎は微笑んで缶に口を付けた。 「ケーキ食べた後に生チョコ食べてアルコール飲むなんて、お前罪深いな」 「今日はお祝いしてもらったからな。でも確かに動かなきゃなあ。明日は歩いて大学行くわ」 「地下鉄三駅分って、徒歩だと結構距離あるだろ」 「そうだけど、通学に毎日五百円かかると思うと勿体ないからよく歩いてるよ」 「健康的だねえ」 健は賢太郎の顔色を窺った。飲み始めたばかりなので特に変わった様子はない。さほど強くもないお酒のようなので、吐いたり倒れたりすることはないと思うが、念のためにコップに水を注いでやる。 「心配してくれてどうも」 「いいえ。お酒美味しいか?」 「んー……後味が少し苦くて、飲み込むときにちょっとくらっとするな。他は普通のジュースだし、特別美味いとは思わない」 「ふーん。お気に召さなかったってやつ?」 「不味くはないけど、酒じゃなくてもいいかな。付き合いで飲むくらいなら良いけどさ、そう頻繁に飲みたいもんでもないわ、今は」

ともだちにシェアしよう!