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同居人の誕生日は今日だけど、俺は何も用意してない(13)
「健、どうした?」
「俺も何か飲みたくなったの。あとこれ……おつまみってわけじゃなくてプレゼントだけど、良かったら食べなよ」
健は炭酸飲料を注いだ後、何でもないように生チョコ入りの箱を差し出した。賢太郎は徐に中身を確認すると、一粒つまんでから箱を閉じ、テーブルの隅へ置いた。
「これもわざわざ用意してくれたんだな。ありがとう。……毎日少しずつ味わうわ」
賢太郎は生チョコを口に入れると、見たこともない満面の笑みを浮かべた。彼のその顔が意外すぎて、健は吹き出すように笑ってしまう。賢太郎は健を睨みつつ、チューハイの缶を開けた。コップと缶を合わせて乾杯、とおどけて見せると、賢太郎は微笑んで缶に口を付けた。
「ケーキ食べた後に生チョコ食べてアルコール飲むなんて、お前罪深いな」
「今日はお祝いしてもらったからな。でも確かに動かなきゃなあ。明日は歩いて大学行くわ」
「地下鉄三駅分って、徒歩だと結構距離あるだろ」
「そうだけど、通学に毎日五百円かかると思うと勿体ないからよく歩いてるよ」
「健康的だねえ」
健は賢太郎の顔色を窺った。飲み始めたばかりなので特に変わった様子はない。さほど強くもないお酒のようなので、吐いたり倒れたりすることはないと思うが、念のためにコップに水を注いでやる。
「心配してくれてどうも」
「いいえ。お酒美味しいか?」
「んー……後味が少し苦くて、飲み込むときにちょっとくらっとするな。他は普通のジュースだし、特別美味いとは思わない」
「ふーん。お気に召さなかったってやつ?」
「不味くはないけど、酒じゃなくてもいいかな。付き合いで飲むくらいなら良いけどさ、そう頻繁に飲みたいもんでもないわ、今は」
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