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同居人の誕生日は今日だけど、俺は何も用意してない(16)
「無理じゃないか? 俺が嫌とかじゃなくて、風呂の広さ的に無理って話な」
「分かってる。だから、旅行に行こう。この家よりも風呂が広いホテルもあるだろ。そこで一緒に入る」
「ええ……」
旅行の目的が観光でなくて風呂だということに、健は少なからず不満を覚えた。賢太郎が積極的なのは嬉しいことだけれど、折角遠出をするなら二人で色々と楽しみたい気持ちもある。
「嫌か?」
「そういうわけじゃないよ。折角二人で遠出するんだから、観光もしたいじゃん?」
「それもそうだな。今は酒で頭が回らないから、明日細かいところ詰めて話し合おうか。どこ行きたいか考えとけよ」
日程、場所、予算、交通手段など、決めるべきことは意外と多い。けれど、それを考えるのは明日にしよう。歯を磨いて、布団を敷いて、そこに二人で寝そべった。
二人で並んで横になるだけでは狭いので、賢太郎は腕を伸ばして健の頭の下に潜り込ませ、その腕で肩を抱き寄せてくれる。腕枕というやつだ。
賢太郎の頬に唇を寄せて口付けると、微かな笑い声がする。唇を合わせて舌を入れようとしたら、賢太郎は幸せそうな顔で寝息を立てていた。やっぱり眠かったんじゃないか、と健は呆れる。
無理矢理起こすのも忍びなかったし、相手の記憶が有耶無耶なままスキンシップをしても虚しいので、キスを一回して賢太郎の腕の中に戻った。焦る必要はない。また明日も、そのまた次の日も、こうやって一緒に眠るチャンスがある。
布団と腕の温もりに包まれて満たされながら、微睡みの中へ沈み込んでいった。
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