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同居人が知らない人と喧嘩してるけど、俺は止めない(3)

賢太郎が姉相手だとあそこまでぞんざいな対応になるとは思っていなかった健は、自分が普段賢太郎から優しく接してもらっていることに対する嬉しさだけでなく、彼から気兼ねなく接せる対象として見られていないことに対する不安も感じていた。 とは言え、賢太郎も知恵美も紆余曲折あって実家を出たのだろうから、その過程で何かあったと考える方が自然である。知恵美の言動からして、賢太郎の大学進学前は意外と仲が良かったのかもしれない。 帰宅して知恵美がお手洗いに行っている間、二人はお互いの取るべき行動についての話になった。つまり、健が席を外すべきかどうかについての話だ。 「賢太郎、俺は席を外した方が良くないか? 物を動かしたり煩くしたりしなければ、姉弟で喧嘩してもらって構わないからさ」 「いや、健がいなかったら収拾付かないかもしれないし、居てもらった方がオレは安心する。姉さんも人の目があれば冷静になるだろ」 「大学でもたくさんの人の目があったけど?」 「………………そういえばそうだったな。ただ、健に変な話を聞かせるのも申し訳ないし、でも健を追い出すのも悪いよな」 「俺のことは気にしなくて良いよ。賢太郎は俺にどうしてほしい? あとお姉さんにも気持ちを聞かなきゃいけないな」 賢太郎の意向としては、もし細川家の込み入った話になったとしても、健に聞かれるのは問題ないと思っているようだ。そして健も、はっきりとは口には出さなかったが、賢太郎の家のことが気になっていた。なので、自分が同席する分には構わない、と伝えてある。

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