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同居人が知らない人と喧嘩してるけど、俺は止めない(4)
また、知恵美には二人が付き合っていることは伏せておこう、という話を賢太郎からされた。同性同士の付き合いを受け入れられない人もいるから仕方ない、身内なら尚更だろうと健は納得したが、絶対姉さんはニヤニヤしてからかってくる、それが嫌なんだ、と賢太郎は付け加えた。少し心が温かくなる。やはり、細川姉弟は仲が良いようだ。
お手洗いから出てきた知恵美も、賢太郎と同じ意向だった。寧ろ、知恵美は健の話も聞きたいと興味津々のようだ。弟の友人から、弟の普段の生活などを聞いてみたいのだろう。ただ、それは細川姉弟の話し合いが済んでからの話だ。
「うーん、何から話せばいいのかな。とりあえず今、宿無しだから泊めてほしいって賢太郎にお願いするつもりだったんだけど」
悪気なく言ってのける知恵美の腹から、情けない音が鳴り響く。時刻は午後五時を回っているが、当然ながら晩ご飯の準備は済んでいない。賢太郎は溜息を吐くと、キッチンへ向かい冷蔵庫を漁った。
「賢太郎、どうする?」
「茶菓子でも出しとくわ。がっつり晩ご飯食べさせたら、姉さんが長居するだろ」
「じゃあ俺は飲み物の用意するわ」
「いや~、二人とも悪いわね~」
簡単にもてなしの準備をしている健達に、知恵美はのんびりと声をかける。賢太郎は「悪い人じゃないんだよ」とフォローを入れた。
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