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同居人のお姉さんが、俺にもちょっかいを出してくる

「そもそも、姉さんが今までどこに居たのかも知らないんだけど」 賢太郎は茶菓子を置きつつ知恵美に話しかけた。知恵美はそこから素早くクッキーを取った後、唸りながら言葉を探している。 「元彼の家、って言えば良いのかな。賢太郎は知らなかったかもしれないけど、今の職場で出会った人なの。同棲してみて、良かったら結婚しようって言ってたのに……」 「はあ。姉さんのそういう話は、失敗談しか聞いたことないからな」 「そんなことないよ! 別れたってことは、その前に告白が成功してるってことだからね? だから失敗ばかりじゃないんだって」 「姉さん、自分でおかしなこと言ってるのは分かってるか? その後に上手くいってないんだから失敗談だろ」 弟の辛辣な返しに、知恵美は溜息を吐く。賢太郎によると、知恵美は学生時代から恋多き女性だったらしい。しかし、彼女が惹かれるのは決まって頼りない男だった。彼には自分がいなくては駄目だと思わせるような、母性本能をくすぐる人物が好みのようだ。そして、今回破局してしまった相手もそういうタイプだったらしい。 「でも、あたしのこと好きって言ってくれてたんだよ?! 何で他の女を作っちゃうんだろう」 「それは歴代彼氏に聞いてくれ」 「それが聞けたら苦労しないよ。あたしってそんなに魅力ないのかな……? ねえ、盛山君はどう思う?」 「えっ……え、魅力の話ですか」 「うん。盛山君の意見を参考にしたいなって思って」 知恵美は髪の毛の手入れも行き届いているし、化粧も濃すぎず薄すぎず、大人っぽい顔立ちを引き立てるメイクが似合っていた。初対面の健に対しても壁を感じさせずに話しかけてくれるし、性格や話し方もキツくなさそうだ。正直に言わせてもらえば、かなり良い人だと思う。外で騒いでいたのは大分宜しくないけれど。 しかし、知恵美に対して魅力的ですと迂闊に口には出来ない。健には賢太郎という恋人がいるからだ。しかもその恋人は目の前に居る。だが、だからと言って魅力は無いですと切り捨ててしまうと、知恵美を傷つけてしまう。知恵美は弱々しい視線を投げかけてくるが、どう答えたものか健は困り果てた。

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