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同居人のお姉さんが、俺にもちょっかいを出してくる(2)
「おい、健が迷惑してるからやめてくれ」
「えー?! 盛山君、迷惑だった? ごめんね」
「いや、迷惑とかじゃないです。ただ、まだ会って間もないのに無責任なこと言えませんし……」
「盛山君、真面目ねー」
でも、そこは適当に褒めてもらえると嬉しいかな~、と知恵美は軽口を叩く。健だって、自分より年上の女性の割合が高い職場でバイトしているので、そういう処世術は理解している。弟さんと付き合ってなかったらそうしてたかもしれませんね、とは口が裂けても言えないけれど。
こういう、付き合っている相手がいるのだからお世辞でも色目は使わない、という健の思考こそが真面目と言われる所以なのかも知れない。
「健は姉さんが付き合ってきた軽薄な男とはタイプが違うと思うぞ」
「軽薄?! ちょっと賢太郎、失礼すぎて聞き捨てならないんですけど」
「姉さんという彼女がいながら、同時進行ですぐ浮気するような男達だったんだから、軽薄としか言いようがないな。姉さんも見る目が無いんじゃないのか?」
「何ですって!」
知恵美はテーブルに強く拳を打ち付けた。ミシ、と音がする。決戦の火蓋が切って落とされそうな予感がした。この姉弟、先程から話が脱線しすぎである。しかし、曲がった軌道を修正する力は健にはなかった。
賢太郎の辛辣かつ失礼な物言いも分かる。仲の良い姉を弄んで捨てた男のことなど、良く言えるはずがない。そして、自分を大事にしないような男を選び続けて傷つく姉自身にも苛立っているのだろう。今回はそれが原因で迷惑を被ってしまったので当然の感情だ。
ただ、知恵美も情が深い人間だ。今まで別れてきた男のことを貶されて怒るなんて、甘いにもほどがある。彼女は彼らのことを本当に好きだったのだろう。そして、別れの原因を自分に求めており、元彼を悪し様に言う素振りがない。だからこそ浮気を繰り返されてしまうのかも知れないが。
恋愛経験の少ない健には、知恵美を愚かしいとも、馬鹿馬鹿しいとも断ずることが出来なかった。
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