35 / 75

同居人のお姉さんが、俺にもちょっかいを出してくる(4)

知恵美は診断サイトのような質問を繰り返し、弟をからかっている。健気に答えている声が掠れていて、彼がこのような『恋バナ』が苦手なのだと分かる。 健はどんな顔をして良いのか分からなかった。賢太郎と出会ってから今に至るまでの記憶が思い出されて、感慨深いやら冷や汗が出るやら忙しい。 「まだまだあるからね。その子のことを好きになったきっかけは?」 「……食べものを、美味しそうに食べてたのが可愛かった」 「じゃあその子、賢太郎の作ったご飯も食べたの?」 「ああ。いつも美味しい、好きだって言ってくれる」 「そりゃ好きになるわー。良い子ね」 「そうだな、真面目で可愛い奴だよ」 賢太郎は話を進めるたびに少しずつ饒舌になっていった。それとは逆に、これは新手の拷問かと思うほど健は悶えていた。今からでも外に出ようか。でも、怪しまれてしまうかもしれない。何より賢太郎の口から、自分についての話を聞く機会なんて滅多にない。もっと聞きたかった。 「料理とか家事とか、ここでもしてるの?」 「してるに決まってるだろ。健に無理言って居候させてもらったんだから。もちろん半分は健がやってるけど、料理はほとんどオレだよ」 「そっか。……賢太郎、実家に居る時は料理作るのも家事をするのもすごく嫌そうだったから。何か、前向きになったよね」 「……そりゃ実家だと貶されるだけだったから」 「あたしもそれなりに褒めてたつもりなんだけどなあ」 恋人さんと盛山君のおかげかなあ、と言いながら知恵美は寂しそうな表情を浮かべた。そりゃ姉さんは色々気にかけてくれたけど、と賢太郎は素っ気なく呟く。

ともだちにシェアしよう!