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上手くいかなかったことは話したくない(3)

賢太郎が首筋に舌を這わせる感触で、身体が歓喜に震える。胸に触れる手が熱くて、冷えた身体に温もりが移っていくようだ。 賢太郎の言葉に勇気を貰って、先に進めるはずだと思った。 けれど、恋人の手が下の方にずれて行くにつれ、健の身体は分かりやすく硬直してしまう。大丈夫か、と賢太郎は声をかけてくれる。大丈夫、と健も復唱する。ただ、言葉に身体と心がついて行かない。温もりを貰ったはずの身体は末端から冷えていく。自分の指を入れたときの恐怖と圧迫感が消えてくれない。 もし上手くいかなかったらどうしよう。賢太郎のことが好きなのに、痛みに耐えられないのは何故だろう。賢太郎に見放されてしまうことが、健には一番耐えられないことだった。 賢太郎は健の身体にたくさん触れてくれた。その温かさに心が何度も支えられる。けれど、それにも限りがあった。賢太郎の指先が冷たくなっていく。いけない、このままでは無理だ。頭の中で警鐘が鳴り響く。 恋人の指先が臀部に触れたとき、風呂の中で息を殺し苦しんだ記憶がよみがえる。健は反射的に賢太郎の腕を握った。 「……賢太郎、ごめん。無理だ」 賢太郎の顔に落胆の色が浮かんでいる。それを見て、心臓が冷えた刃に刺されたように、健は動けなくなった。 その後のことはあまり覚えていない。 ただ、賢太郎と同じ布団に入るのが申し訳なくて、最近使っていなかったベッドに横たわったことは記憶に残っている。 翌朝目を開けると、隣で窮屈そうに賢太郎が眠っていた。彼の耳に顔を寄せて謝罪の言葉を呟くと、健は起き上がって身支度をし、家を後にした。

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