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恋人が可愛いので、オレの我慢が利かない(5)

アウトレットモールは健の言うとおり広くて、しかも二階建てだった。回るのにくたびれそうなほど店があり、総数は二百五十だそうだ。ただ、その中でもメンズ用品専門店は十店舗ほどであり、かなり絞り込まれる。 話し合った結果、方々に散らばったメンズ専門店を起点に、他の店舗で良さそうなところがあったら入ってみる、という方針が定まった。 「普通のショッピングモールに入ってるような店もあるんだな。だいたいレディースだけど」 「人も多いな。健、見たいところあったら言えよ」 アウトレットモールの客は、若いカップルや家族連れが多い。ただ、同性の友人と訪れているらしい若人もちらほら見受けられる。男二人で訪れた賢太郎と健は、特段目立っている様子がない。他の客も、連れや商品にしか目が行っていないのだろう。 とはいえ、流石にこんな中で手は繋げない。賢太郎が上の空でいると、右手が温もりに包まれた。え、と思わず間抜けな声を出すと、健が申し訳なさそうに賢太郎の手を掴んでいる。 「悪い。この時計、興味があるから見てみたいんだけど」 どうやら賢太郎を引き止めたかっただけのようだ。すぐに離された手は所在なく宙に浮いた。 健が見ていたのは、有名ブランドのスケルトンの腕時計だった。内部機構が見えるようになっている時計で、お値段は二百万円らしい。値札に二人して恐れ戦いていると、近くに居たカップルが店内スタッフに捕まっていた。漏れ聞こえる説明によると、この時計は特殊な外殻構造をしており、限られたメーカーでしか生産されていないらしい。二人で気配を殺しながら店内を回ったが、やはり例の時計が一番値段が高かった。 店舗を出ると、二人は同時に息を吐いた。それがおかしくて、お互いくすくすと笑う。 「まさかあんなに高いなんて思わなかったわ。アウトレットモールって怖いな」 「お前の見てたあのブランド、有名だしな。構造も特殊なら、そりゃ高いわ……」 何年後になるかは分からないが、ああいう時計を健にプレゼントしてやりたい、と思ったことも確かだ。けれど、あれが買えるようになる頃には、また新しい時計が発売されているだろう。携帯で例の腕時計を調べて、画像を保存しておいた。

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