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恋人が可愛いので、オレの我慢が利かない(6)

他にも、服や鞄を見て回ったり、遅めの昼ご飯を食べたりと、二人はそれなりにアウトレットモールを満喫していた。寝具メーカーや調理器具メーカーまで並んでいたのは驚きだった。鍋やフライパンは買い替えなくても大丈夫だし、電気ケトルも別メーカーのものがある。圧力鍋には少し惹かれたけれど。 名前も知らない服屋のマネキンが目に付く。薄いグレーのVネックセーターに紺色のカーディガンが羽織られている。ボトムスはベージュのチノパンだ。メンズとレディースの取り扱いが半々くらいの店だった。 「賢太郎、気になる?」 「ああ。シンプルだけど、ああいうの好きなんだよな」 「一回着てみれば?」 健の言葉に頷いて、同じ服を探して試着室に入る。着替えて鏡を見ると、概ね予想通りの姿が映っていた。 「賢太郎、どうだ?」 「うん。結構好みだ」 「そりゃ良かったな。なんか、スマートに見えるね。似合ってるよ」 健は試着室のカーテンを開けて覗き込むと、満足そうに微笑んだ。多少でも格好いいと思ってくれたなら嬉しいのだが、それは恥ずかしくて聞けなかった。案外ショッピングも良いものだ。賢太郎は、とっととホテルに向かいたいと思っていた数時間前の自分を恥じた。 思わぬ出費だったが、値段がお手ごろだったので、テーマパークに行かなかった分が浮いたと考えれば帳尻が合う。 ベイクドチーズケーキとバウムクーヘンが合体したお菓子を健が買って、他の店も見て回る。時間が良い頃合いになってきたので、二人でホテルへ向かうことにした。

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