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恋人のことを深く知りたい(2)

「バイトのシフトを増やして、休日ゆっくり話せる時間がなくなったのはオレのせいでもある。オレだって健が避ける余地を作ってた」 「……そんなことないよ」 健は賢太郎の言葉を受け止めかねているようだ。例の一夜のことが尾を引いているのは分かっている。 「避けてた理由も何となく分かる。お前だけが負い目を感じるのはおかしいだろ。オレも努力不足で勉強不足だった。そのせいで、お前に怖い思いさせたんだろ? ごめん」 「……違う。賢太郎は悪くない。痛みに耐えられなかった俺が悪いんだ」 健の心を引っ張り上げたいのに、どうしても上手く触れられない。どうしようもない齟齬が生じている気がする。 健は視線を逸らして息を整えた後、賢太郎の両頬に当てていた手を離す。 「お前の誕生日の後から、一人で試してたんだ」 「何を?」 「その……慣らすっていうかさ。指、入れてみたりした」 でも駄目だった。痛くて怖くて、拡げるどころの話じゃなかった。健はぽつぽつと話し続ける。 賢太郎は少なからず衝撃を受けた。健が一人で、先のことを考えて痛みと闘っていたことを知らなかったから。 風呂の時間が長くなっていたのも、健が風呂から上がってすぐに眠りについてしまったのも、賢太郎を避けていたのではなく、健が一人でその苦痛に耐えていたからなのだと気づいて、腑に落ちた。同時に、気づけなかった自分への憤慨と、健に頼って貰えなかったという無力感が賢太郎の心を襲う。 「あの時さ、もしかして賢太郎を受け入れる流れになるのかなって考えたら、体が固まって動かなかった。自分の指だけでも耐えられないのに、お前を受け入れるなんて無理だと思ったから」 「お前が頑張ってくれてたのは嬉しいけど、無理にする気はないよ。まだ他にもやってないことはたくさんあるだろ。オレのこと、受け入れられなくても構わない。ただ一緒にいたいんだ」 言葉を尽くしても、健の表情は暗いまま変わらない。次第に泣き出しそうな顔になっていくので、賢太郎はもどかしさを感じていた。

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