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オレは恋人と先へ進みたい

あの後、チーズフォンデュを頼んで二人で食べた。オリーブオイルが混ざっていたようで、普通のチーズフォンデュよりも絡まりが良く、独特の風味と塩気がチーズに合っており、率直に言うととても美味しかった。ただ、最後にはオリーブオイルとチーズが分離し、残ったチーズが塊になってしまう。それは、二人で分けてバゲットに乗せて完食した。 ホテルの客室に戻ると、賢太郎は浴槽に湯を溜め始めた。十五分くらいはかかるだろう。 ベッドに座る健の隣に腰掛けて、携帯のタイマーをセットしておく。後は、これが鳴るのを待って、健と二人でお風呂に浸かるだけ。そうすれば、この旅行の目的は全て達成される。 賢太郎は安心したと同時に一気に疲れを感じて、背中からベッドに身を投げ出した。食べ物の消化にエネルギーを持っていかれてしまっていることもあって、瞼が自然と下りていく。頭頂部に手の温もりを感じて目線を上げると、健が慈愛に満ちた笑みを浮かべて、賢太郎の頭を撫でていた。 「賢太郎、お疲れ様。今日は本当に、いろいろとありがとう。お陰で、すごく楽しかった」 「ん……気にするな」 「運転もしてくれたし、気を張ってたんだろ? タイマー鳴ったら、俺がお湯止めるから大丈夫。寝てて良いよ」 一旦、おやすみ。 一際優しい声に抱かれて、賢太郎の意識は深く沈んでいった。 * シャワーの音が遠くで鳴り響いている。心地良い水の音が賢太郎の意識を浮上させた。 目を開けて起き上がる。アラームが鳴る前に目覚めてしまった。その割には、疲労がしっかり取れているような気もする。健はいない。トイレにでも行っているのだろうか。 携帯に目を遣ると、賢太郎は固まった。湯を溜め始めてから三十分が経過していたからだ。アラームは解除された形跡がある。シャワーの音は未だ鳴り止まない。……起こしてくれると言っていたのに、どうして一人で風呂に入っているんだ、健は。期待を裏切られたような気がして、賢太郎は気分を損ねた。

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