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◎オレは恋人と先へ進みたい(5)
後ろから健の胸を探ると、艶のある声が賢太郎の耳を浸食した。次第に呼吸が浅くなってきて、合わせた唇が息継ぎの度に離れていく。
健が切羽詰まった顔で振り向いて、賢太郎の腰に足を絡ませて太腿に乗り上げ、昂ぶった自身を恋人のものに合わせた。二人の手を重ねて上下に動かすが、お湯の抵抗で思った刺激が与えられず、腰が揺れる。健の背中を片手で支えると、首に腕が回ってきた。浴槽の湯が跳ねて、二人分の喘ぎ声が黒いタイルに染みこんでいく。
「賢太郎、出したい。だめ?」
掠れた声と潤んだ瞳が胸を射貫く。ここで出したら後まで興奮が続かないかもしれない。けれど手は止められず、二人で上り詰めて達した。
風呂から上がって身体を拭き、備え付けの白いバスローブに着替える。荷物をまとめたり歯を磨いたり爪を切ったりする間にも、賢太郎の思考はこの後のことでいっぱいになっていた。一回出すものを出したので煩悩は消え失せたかと思いきや、無くなったのは懸念や不安といった悪感情だけだった。我ながら楽観的だと思う。
ここから先は未知の領域だけれど、健と二人なら乗り越えられるような気がした。乗り越えられなくても、今から向かうところがどんなところか、確かめることができれば問題ない。
健はベッドの真ん中でタオルを敷いて座っていた。固まっている表情を解すように頬を撫でる。健からキスを仕掛けてきたので、ベッドに押し倒した。バスローブのボタンを外して気付いたのは、健が下着を履いていないことだった。どうせ脱ぐんだから同じことだと抜かす恋人は恥ずかしそうで、こちらは既に正気を失いそうだった。
胸の頂を舐めながら内腿を擦る。肌触りと肉付きが良くて、ずっと触っていたくなる。
「んん……あっ、は」
「健、胸も弱いよな」
「うう、うるさいな」
健に頭を掴まれながら内腿の付け根に手を伸ばす。会陰、尻と触れていったが、仰向けでは秘所を慣らすのは難しいと判断し、健にはうつ伏せになってもらうことにした。
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